インタビュー(対談)は、インタビュアー(聞き手)がインタビュイー(話し手)から話を聞く形式で行われます。
インタビューをもとに作成するのがインタビュー記事です。
企業のブランディング、事例紹介、商材のアピールなど、インタビュー記事で魅力的に伝えられる事柄は多くあり、インタビュー記事の需要は高まっています。ところが、取材・文字起こし・編集・記事作成までできるライターはまだまだ足りないのが現状です。
インタビュー記事が書けるようになりたいです。
わかりました。
それでは、インタビュー記事の書き方をご説明します。
今回は、インタビュー記事の書き方について詳しく解説いたします。話し手の思いを、魅力ある文章で分かりやすく読者に伝えられるようになりましょう。
目次
インタビュー記事の書き方
インタビュー記事の書き方を流れに沿ってご説明します。
魅力あるインタビュー記事を作成するための手順には、取材前の準備も含まれます。
取材を盛り上げるために心がけること、取材時の空気感を上手に伝える記事にするためのコツなど、参考にしてみてください。
取材前:4つの準備
取材の依頼をいただいたら、準備が必要です。準備なしにそのまま取材に出向いても、良い取材はできません。
次の準備をしましょう。
【取材前の準備】
- 記事のテーマと目的を確認する
- 記事の構成をざっくりと考えておく
- 取材する人物について調査する
- 質問リストを作成する
詳しく見ていきましょう。
1. 記事のテーマと目的を確認する
まず、依頼されたインタビュー記事の目的(ゴール)を確認します。
依頼者が何を意図して、どのような目的のために記事を必要としているのか、事前の話し合いで確認しておきましょう。
2. 記事の構成をざっくりと考えておく
記事の構成をざっくりと考えておきます。構成があると、どのような流れで、どのような質問をするべきなのか考えられるからです。
ただし、構成を完全に固めておくのはいけません。実際にインタビューをしながら、その場で引き出される話題もあるからです。「絶対にこの構成でなければ」と思ってインタビューすると、誘導尋問のようになってしまいます。それでは、せっかくインタビューの場で得られるはずだった貴重なお話しが聞けなくなってしまうでしょう。
記事の方向性を決める程度の構成を考えておきます。構成の7〜8割を決めておくイメージです。あとは、その場で意外な話題があったら、方向転換してもよい、ぐらいの考えで臨みましょう。
インタビューの結果次第で、柔軟に変更できるような構成が丁度よいです。
3. 取材する人物について調査する
取材する人物について、経歴、人物像、著作物などを予め調べておきます。
取材相手について知ることで、興味を持ってインタビューできます。実際にお会いするのが楽しみになるぐらい取材相手について知っておくのがポイントです。
取材相手を知るためには次の方法があります
- 取材相手の経歴を確認する
- 取材相手のHPを閲覧する
- 取材相手のSNSを閲覧する
- 取材相手についてのweb記事を読む
- 取材相手の過去のインタビュー記事を読む
- 取材相手の著作物を読む
- 取材相手の知り合いの話しを聞
取材相手が、過去にもインタビューを受けている場合には、そちらも目をとおしておきましょう。取材相手が執筆した著作物があれば、読んでおきます。
あまり情報が公開されていない場合は仕方ありませんが、できるだけ調査しましょう。
4. 質問リストを作成しておく
何を質問するのか、予め考えておきましょう。取材相手が答えやすい質問を考えておきます。
質問リストを作るために気をつけることはありますか?
質問リストを作成するときには、次の4つのポイントを確認しましょう。
- 質問の優先順位を決める
- 過去・現在・未来の質問を用意する
- クローズド・クエスチョンとオープン・クエスチョンを用意する
- 5W1Hを意識する
インタビューの時間は限られています。用意していた質問について全て話せるとは限りません。質問の優先順位を決めておきましょう。優先順位が決めてあれば、肝心のことを聞き逃す心配がありません。時間が迫ってきたら「これだけは聞いておかなければ…」という質問を優先します。
ただし、質問の流れは、優先順位が上の質問から始めていくわけではありません。まずは、取材相手が答えやすい「現在」の状況について話しをします。そこから、「過去」に起きたこと、「未来に思い描くこと」へつながる流れで話しが進むようにしましょう。
記事にするときにも、未来へとつながる流れで終わるとポジティブな印象になります。
【質問の流れは現在→過去→未来へ】
現在は〇〇な状態である
↓
過去は〇〇があった
↓
○○な未来へ向かっている
質問の種類は、クローズド・クエスチョンからオープン・クエスチョンの流れに進むよう質問します。クローズド・クエスチョンとは、「はい」「いいえ」などの選択肢で答えられる質問です。取材相手が答えやすいメリットがあります。
オープン・クエスチョンとは、自由に回答できる質問です。取材相手の考えを自由に話してもらえるメリットがあります。ただし、少々答えにくいこともあるため、具体例を挙げて答えを引き出すなどの工夫が必要です。
インタビューの流れでは、まずは、取材相手が答えやすいクローズド・クエスチョンから始めます。
その後、中盤以降にオープン・クエスチョンを投げかけて話しを広げていくとよいでしょう。
予想外の返答があったり、思いも寄らないお話が聞けることがあります。そこがインタビューの醍醐味です。
【例:クローズド・クエスチョン】
AかBのどちらを選択しますか?
(→AかBで答えられる)
そのとき緊張しましたか?
(→緊張した/緊張しないで答えられる)
↓
【例:オープン・クエスチョン】
そのとき、どう感じましたか?
(→自由に気持ちや考えを話せる)
これからの○○についてどうお考えですか?
(→考えが聞けて話しも広がる)
質問では、5W1Hも意識します。
【5W1H】
- When: いつ
- Where: どこで
- Who: 誰が
- What: 何を
- Why: なぜ
- How: どのように
質問を具体的に考えるときには、5W1Hのフレームワークに当てはめて考えてみましょう。
取材する:8つのポイント
それでは、いよいよ取材に臨みます。インタビュー時間は1時間程度が記事にまとめやすいです。
1時間程度のインタビューであれば、文字に起こしたあと、編集して3,000〜4,000字程度の記事にできるでしょう。2時間以上のインタビューでは、間延びしてしまい、記事にするのに苦労するかもしれません。
取材の場では、次のポイントに気をつけましょう。
【取材のポイント】
- 最初から最後まで録音する
- 挨拶する
- 話し始めは取材の経緯を説明する
- 質問リストを確認するが頼りすぎない/li>
- 相づちを打つ
- 相手に話してもらう
- わからないことは素直に聞く
- 具体的に聞き出す
もしも、ライターが撮影まで行う場合には、インタビュー後に撮るのがよいでしょう。リラックスした自然な表情の写真が撮れます。オンラインであれば、スクリーンショットで撮影します。あるいは、写真データを送信していただきましょう。
それぞれのポイントについて詳しくご説明します。
ポイント1. 最初から最後まで録音する
インタビューは最初から最後まで録音しておきます。インタビューが終わったからと録音を切ってしまってはいけません。
インタビュー後のリラックスした雑談のときこそ、相手の本当の気持ちや素晴らしい言葉が聞けることが少なくないでしょう。
ポイント2. 挨拶する
笑顔で挨拶をします。そのとき、取材させていただくことに対してお礼の言葉も述べるとよいでしょう。
【例:挨拶】
「はじめまして。ライターの〇〇〇〇と申します。
本日は、お忙しいなか、取材にご協力いただきましてありがとうございます。
どうぞよろしくお願いします」
ポイント3. 取材の経緯を説明する
話し始めは、取材に至った経緯を説明するのがよいでしょう。スムーズに取材に入っていけます。
【例:取材の経緯を説明する】
「今回は、〇〇というメディアに掲載予定とのことで、○○というテーマでの取材を考えております。
ぜひ、〇〇様にお話をお聞かせいただきたいと楽しみにしてまいりました。
取材は1時間を予定しております。よろしくお願いします。
それではお伺いしたいのですが…」
ポイント4. 質問リストを確認するが頼りすぎない
「これは絶対に聞かなければ」という質問を忘れないためにも質問リストを確認しましょう。ただし、あまり事前のリストに頼りすぎると、会話の自由度がなくなり、楽しいインタビューになりません。
「インタビューしてみなければ分からなかった!」という話しが飛び出すのが取材する意義です。柔軟な会話運びをしましょう。
ポイント5. 相づちを打つ
お話しを聞きながら、しっかり相づちも打つようにしましょう。
【例:相づち】
「へー!」「なるほど!」
「そうなんですか!」「ええっ」
取材が盛り上がって、どんどん話していただけるように、心から興味を持っていると示せる相づちを打ちましょう。楽しいインタビューになれば成功です。
ポイント6. 相手に話してもらう
当然ですが、取材相手に中心になって話してもらいましょう。
インビュアーは、質問と相づちで、上手に話しを引き出します。事前調査でもい知っていることでも、話してもらうと新しい発見があるものです。
【例:話しを引き出す】
「著書で拝読したのですが、〇〇のときに〇〇されたとか…」
「以前、記事で拝見したのですが、〇〇だそうですね…」
対談ではないので、「私も…」などと、つい自分の経験談を披露しないように気をつけましょう。
ポイント7. わからないことは素直に聞く
疑問に思うことは、その場で聞いておきましょう。あとで記事を書くときに推測で補うことはできないためです。
【例:わからないことは聞いてみる】
「ところで、起業するにあたって〇〇はどうされたのですか」
「ちなみに、この〇〇はなんのことでしょう?」
「ところで」「ちなみに」など、枕詞を使ってやわらかく質問するとよいでしょう。
ポイント8. 具体的に聞き出す
取材相手のお話は具体的に聞き出しましょう。なんとなく、その場のノリでふわっと曖昧に聞いてしまってはいけません。
【例:具体的に聞き出す】
インタビュイー「そうしたら売上がバーっと上がって…」
インタビュアー「そうですか。具体的にはいくらとか、何%上がったとか、おわかりでしょうか?」
数値化できる情報は、数字で聞いておくと、記事にするときに具体的で質の高い記事にできます。
取材後:文字起こしと編集
取材が終わったら、文字起こしをして編集し、いよいよインタビュー記事を作成します。
文字起こしは必要ですか?
音源を聞きながら直接記事にする方法もありますが…
インタビュー記事を作成するためには、文字起こしを行うほうがよいでしょう。
文字起こしを行わず、音源を聞いて直接記事や資料を作成することもできます。しかし、おすすめはできません。インタビュー音源は、発話のかぶりや音声が不明瞭な部分もあるためです。まずは文字起こしをしましょう。
文字起こしをして文章データを作成してあれば、内容が視覚化されているため、中身をすぐに確認できます。文字起こし原稿を見ながら記事の構成を考え、感動的な記事に仕上げられるでしょう。
「インタビューの文字起こし」のやり方については、こちらの記事をご覧ください↓
インタビュー記事の3つの形式【例文】
インタビュー記事には3つのスタイルがあります。それぞれ確認してみましょう。
Q&A形式(会話形式)
O&A形式は、会話形式の記事のことです。
インタビューの文字起こしをベースに作成するため、比較的、作成しやすい形式です。ただし、質問の順番でストーリーの時系列が前後している場合などは、編集で整えましょう。
【例:Q&A形式】
ーー菱田様が今回の新規ビジネス立ち上げに至った背景には何があったのでしょうか?
菱田 それはシンプルです。「お客様のためによい商品を作る」その原点に回帰したいと思ったからです。
最もインタビュー記事らしい形式です。親しみやすく、飽きずに読めるでしょう。
一人称形式(モノローグ)
一人称形式は、インタビュイー(話し手)が一人で語る形式です。ライターがインタビュイーになりきって書きます。
【一人称形式(モノローグ)】
今回、私が新規ビジネスを立ち上げようと思った動機は、「お客様のためによい商品を作る」という原点に回帰したいということでした。
インタビュアーやライターの言葉は登場しません。インタビュイーが一人で語る形式です。創業ストーリーなどの回想に適しています。インタビュイーの人柄を伝えやすい形式ですが、冗長にならないよう気をつける必要があります。
三人称形式(ライター語り)
三人称形式は、ライターが語る形式です。読ませる記事にするためにはライターの力量が試されるでしょう。
【例:三人称形式(ライター語り)】
〇〇は、株式会社菱田にとって重要なビジネスではないか?という質問に対し、菱田社長は、微笑みながら穏やかに、こう答えた。
「どれか一つのビジネスだけに特化しようとは思っていません。菱田の全てのビジネスに思い入れがないと、おかしいじゃないですか?」
こちらの形式であれば、インタビュイーの表情や口調も表現できます。ライターの執筆スキルが必要な記事ですが、上手く作成できればとても読み応えのある記事が完成するでしょう。
面白いインタビュー記事を作成するためには
話し手の思いを正確に過不足なく記事にすることは大切です。しかし、正確さだけでは魅力に欠ける記事になってしまうこともあります。
「読みたい」「面白い」と感じるインタビュー記事にするためには次のポイントがあります。
- インタビュイーの魅力が伝わるように編集する
- ストーリーのようにまとめる
- 読みやすい文章にする
インタビューの魅力を伝えるためには、インタビューをそのまま文章にするのではなく、ある部分を強調したり、話しの順序を並べ替えて感動的に終わるようにしたりするなどの工夫が必要です。
また、読者が心地よく読めるよう、言葉の選び方、改行の位置、句読点の打ち方まで考え、流れのよい文章にしましょう。
インタビュイー:「上手にまとめてくれた」「素敵に書いてくれた」
読み手:「素晴らしいストーリーを読めてよかった」「感動した」 |
そんな読後感が残るインタビュー記事を目指しましょう。
魅力的なインタビュー記事を作成しよう
インタビュー記事を書くなら、次の点に注力します。
- 話し手の人物像や想いを魅力的に伝える
- ストーリー性のある記事にする
「こんなに上手にまとめてくれた」「自分の想いを自分で言葉にする以上に伝えてくれた」そんなふうに、インタビュイーに喜んでもらえる記事を作成しましょう。読み手にとっても面白い記事だと感じてもらえるはずです。
そのためには、細かい配慮とスキルとセンスが必要です。普段から、さまざまな事柄に興味を持って知識を習得し、向上心と誇りを持って仕事に臨むことを心がけてみましょう。
参考文献:中村洋太「インタビュー記事の書き方」