テープ起こしと速記の違いを教えてください。
テープ起こしは、録音した音声から文字を起こして原稿を作成します。
速記は、速記者が現地で速記符号を用いて記録し、反訳して原稿を作成します。
仕上がりに大きな違いはありません。
今回は、テープ起こしと速記の違いと、それぞれのメリット・デメリットについて解説いたします。また、代表的な速記の4種類、今後のニーズなどもご覧ください。
目次
テープ起こしと速記の違い
テープ起こしと速記では、仕上がる原稿に大きな違いはありません。違うのは、原稿を作成する過程です。
テープ起こし(文字起こし)では、録音した音声から文字を起こして原稿を作成します。一方、速記では、速記者が現地で聞き取りをして、その場で速記原稿を作成します。その後、速記原稿を持ち帰り、反訳して原稿作成するのです。
【テープ起こしと速記の特徴比較】
テープ起こし | 速記 | |
会場で | 録音する | 速記符号で速記する |
仕事場で | 文字に起こす | 反訳する(文字化する) |
仕上がり | 完成度のばらつきが少ない | 速記者の技量に左右されることも |
速記の場合、仕上がりが速記者の技量に左右されることもないわけではありません。しかし、近年では、速記の場合も予備で録音することが多く、クオリティにばらつきがないことがほとんどです。
詳しく見ていきましょう。
テープ起こし
先日教えていただきました。
文字に起こすとは、音声データを文章データにすることです。録音音声を聞き取り、パソコン入力して文字化します。
【テープ起こしの仕事の流れ】
1. 会場で録音作業
↓
2. 録音データを担当ライターに渡す
↓
3. 文字に起こす
↓
4. 校正(聞き直し校正・読み直し校正)
↓
5. 納品
テープ起こしでまず大切なのは、正しく聞き取ることです。そのため、録音環境を整えることや、専門分野の語彙を増やすことが必要でしょう。
速記
速記とは、速記符号を使い、その場で聞き取った言葉を文字にすることです。
速記符号は、五十音に従って考案されています。ひらがなよりも簡略化されていて、話すスピードに遅れをとらず書いていけます。
話すスピードに遅れずに書き取れるのは便利ですね。
ただし、速記符号で書かれた原稿(速記原稿)は暗号のようで、そのままでは速記者にしか読み取れません。そこで、持ち帰った速記原稿を文章に書き直す作業も必要です。
【仕事の流れ:速記】
1.聞き取りながら速記符号で記録
↓
2. 速記原稿を文章データに直す(反訳)
↓
3. 校正(読み直し校正)
↓
4. 納品
特に、録音不可であれば、速記者による記録に頼るしかありません。録音可能で速記を選ぶ場合、予備的に録音も行いましょう。
テープ起こしのメリット・デメリット
テープ起こしのメリットとデメリットを解説いたします。
メリット
テープ起こしは、ライターが同行しなくても、録音音声があれば文字に起こせるのがメリットです。
音声データは何度でも聞き直せるため、聞き取りにくい箇所の確認をしたり、文章データと照合して正しく文字に起こせているか確認したりもできます。
・現場にライターが同行しなくてよい
・何度も聞き直せる
デメリット
録音機材の不調や操作ミスにより、音声が録音されていないと、文字に起こすことは不可能です。
また、録音音声が悪くて聞き取りにくい場合、原稿中に「聴取不能」の箇所が多くなってしまことがあります。こうした録音の失敗を防ぐための対策が必要です。また、そもそも録音不可の会場もあるでしょう。
・録音が失敗するリスク
・録音不可の会場もある
速記のメリット・デメリット
速記のメリット・デメリットを解説いたします。
メリット
速記は、録音不可の会場でも会話内容を記録できるのがメリットです。
また、速記者は会場で話し手の表情や様子を見ているため、臨場感のある原稿が作成できます。録音では聞き取りにくい音声でも、その場にいれば理解して文字に起こせることもあるでしょう。
録音の失敗があっも、速記原稿があれば、反訳して原稿を作成できます。
・録音不可の会場でも記録できる
・臨場感のある原稿が作成できる
デメリット
会場に速記者が同行しなければならないため、スケジュール調整が必要です。
少なくとも1週間前には依頼して、速記者を確保・手配するなど、余裕を持って対応しなければなりません。
・速記者の手配が必要
・余裕あるスケジュール調整が必要
速記方式の代表的な4種類
速記は、簡単な線や点を使い分けて五十音を表します。文字より速く書けるため、会話を聞きながら書き取ることができます。
速記は、手書き速記と、速記専用の機器を使った機械速記があります。
私も速記ができるようになりたいです。
独学で覚えるのは難しいでしょうか?
テキストも市販されていますが、独学では挫折してしまうことが多いようです。通信教育や速記塾を利用するのが現実的です。
日本速記協会のホームページに、速記を教えてくれる教室や、速記を学べる書籍が紹介されています。そちらを参考にするのもよいでしょう。[注1]
また、表記については、日本速記協会発行の「新訂 標準用字用例辞典」を手元に置いておきましょう。速記は議会で使われてきたため、「公用文表記」が取り入れられています。[注2]
[注2]参考文献/日本速記協会「新訂 標準用字用例辞典」
速記方式の代表的な4種類:早稲田式・中根式・参議院式・衆議院式
速記方式の代表的な4種類をご紹介します。
早稲田式
1930年に、早稲田大学の学生だった川口渉さんが編み出した速記方式です。
折衷派です。20音が単画で、あとは複画です。基本文字数は181文字とやや多めでしょう。
中根式
1914年に、中根正親さんが編み出した速記方式です。
単画派です。基本文字数は82文字で、習得しやすいとされています。
参議院式
1890年の帝国議会の作成に速記が使われたのが始まりです。
もともとは貴族院速記者養成所で習得されていた方式です。貴族院速記者養成所が戦後に廃止され、参議院速記者養成所で習得できるようになりました。
参議院方式は、現在は折衷派です。基本文字数は92文字です。
衆議院式
田鎖綱紀の「日本傍聴記録法」を単画式にした方式です。基本文字数は103文字です。
速記文字の4派
速記方式には10種類以上ありますが、次の4派に分類できます。
【速記の4派】
単画派: かなを1本の線で書く
複画派: 2画で書く
折衷派: 単画派と複画派を取り入れてある
草書派: 草書体を取り入れてある
現在は、単画派と複画派が主流です。さらに、それぞれの派に属する速記の種類があります。
速記文字のおすすめ活用法
速記は、職場だけでなく、日常生活でも使えます。
電話のメモ :聞き漏らさない
ノート :先生のお話を素早く書き留められる
脳活 :集中力と指先を使うことで脳内活性
日記・手帳 :知識がないと読み取れないためプライバシーを守れる
速記は、仕事だけでなく、趣味で身につける人も多いです。
速記士の資格を目指してみるのもよいでしょう。
速記はなくなる?
速記の需要は、録音機器の発達により、減少傾向です。
しかし、録音や録画では、機械が故障するリスクがあります。また、録音不可の場所や状況もあります。そのため、速記が完全に必要とされなくなることはないでしょう。
テープ起こしと速記は臨機応変に使い分ける
テープ起こしは、録音データを何度も聞き直せるという利点があります。しかい、録音が失敗したり、録音不可の場所が会場であったりするリスクもあるでしょう。
速記は速記者が現場で書き取るため、そのような心配がありません。信頼できる企業に発注すれば、どちらの原稿でも仕上がりには遜色ありません。臨機応変に使い分けるのがよいでしょう。