「テープ起こし」は、録音された音声を聞き取り、言葉を文字に起こす仕事です。「文字起こし」ともいいます。
「副業を探している」
「在宅でできる仕事がしたい」
そんな理由で興味を持たれる方が多いようです。実際、在宅でできるテープ起こしは、副業などでほかの仕事と両立させたい方、家事・育児と両立させたい方にも向いています。
国語好きで言葉の探求が好きな方であれば、今から勉強して飛び込んでみることもできます。新しい可能性が開けるかもしれません。
実際に求人があるのか、仕事にかかる時間はどれくらいなのか気になります。
こちらでは、テープ起こしについてまだよくわからない方、初心者の方のため、仕事内容や、気になる求人、仕事時間などの基本的な知識をお伝えいたします。
目次
テープ起こしの仕事内容
テープ起こしは、録音音声を聞き取り、文字に起こす仕事です。文字起こしともいいます。次のように呼ばれます。
「文字に起こす」とは、音声データを文章データにすることです。音源を聞き、言葉をパソコンで入力していきます。それだけ聞くと簡単そうな仕事に思えるかもしれませんが、そんなことはありません。
雑音や言い淀みなどのある音声を正確に聞き取るのは地道で根気が必要な作業です。文脈に不要なケバを取り、読みやすく整えるなど、すべての作業において、文章作成のさまざまな知識と発話者の意図を汲む能力などが必要です。
幅広い分野に興味があり、話し言葉を書き言葉にする工程を楽しめる方には、面白いと感じられる仕事でしょう。
なぜ「起こし」なのか
音声を文章データにすることをなぜ「文字に起こす」というのでしょう。
音声が入ったレコーダーは、いわば眠っている状態です。再生して音声を流さなければ、どんな情報が入っているのかはわかりません。
再生して音声を流し、情報が明確になることは、「眠っている情報を起こす」という状態にたとえられます。
ここから、眠っている情報を文字化して目に見えるようにすることを「文字に起こす」というようになったのでしょう。本当に言い得て妙な表現です。
音声データは、そのままでは再生しない限り情報の確認ができません。文章データにすることで、情報を効率的に確認できるようになります。
テープ起こしの求人は本当にあるの?
テープ起こしを始めてみようと思ってまず気になるのは、「本当に仕事はあるの?」というところではないでしょうか。
テープ起こしの仕事はあります。
厚生労働省の調査によると、平成25年度の在宅ワークの仕事内容では、テープ起こしは4.9%です。[注1]
テープ起こしで仕事を得るなら、主に、3つのルートがあります。
- 企業にスタッフ登録をして受注する
- 直請け(じかうけ)する
- SOHOサイトを介して仕事を受注する
スタッフ登録は、在宅スタッフとして企業に登録し、そちらを介して仕事をもらいます。複数の会社に登録することも可能です。仕事先との価格交渉や煩雑なやりとりは会社に任せられるのがメリットです。
直請けは、文字通り、仕事先から直接仕事を受注します。直請けでは、仕事の価格交渉などの商談を自分でやる必要がありますが、仕事を任されてプロとしてのやりがいを感じられるのがメリットです。
SOHOサイトでは、クラウドソーシングなどを介して仕事を受注します。報酬が安いと感じることもありますが、単発で仕事を請けながら腕を磨けるのがメリットです。クラウドワークスなどでテープ起こしの仕事がないか検索してみると、インタビューテープ起こしの仕事がたくさん見つかるでしょう。
どれか一つにしばられず、複数の方法で仕事を受注しているパターンも多いです。
テープ起こしに向いている人3つの特徴
テープ起こしに向いているのは、次のような人です。
- 言葉の地道な調査・確認作業を楽しめる人
- 広範囲の知識を勉強するのが好きな人
- パソコン操作が苦にならない人(入力やファイル操作)
テープ起こしは、「会話を文字に起こすだけだから簡単だ」と安易に考えてはいけません。知らない言葉は聞き取れないため、まず語彙力が必要です。そのうえで、聞き取りが難しかった言葉や用語を特定したり、確認する作業にも労力を費やします。
さらに、標準的な表記ルールや仕様に合わせた表記に沿って文字化するため、表記を細かく確認する作業もあります。言葉が大好きで、言葉の地道な調査や確認作業が苦にならない人であれば、コツコツを楽しめるでしょう。
また、テープ起こしで請ける仕事のジャンルは多岐にわたります。法務関係の資料から、さまざまな職種のインタビューまで、普段の生活では触れることのない多くの知識に触れる機会があります。知らない話を聞いたり、知らなかった用語を調べて、「そうなんだ!」と喜びを感じられる人は、地道な作業のなかにも楽しみを見つけられるでしょう。
さらに、テープ起こしの仕事をするためには、パソコン操作が必須です。在宅でテープ起こしの仕事をするなら、パソコンとインターネット環境が整っていることが前提でしょう。音声ファイルをダウンロードしたり、ファイルにパスワードをかけたりなど、ファイル操作が円滑にできないと仕事の受注が難しくなってしまいます。
上記のプロセスを確実にこなせる必要があるため、パソコン操作が苦にならない人が向いているでしょう。
テープ起こしの収入は?
テープ起こしの収入も気になります!
慣れるまでは時間がかかる割にあまりお金にはならないでしょうか?
テープ起こしの収入は、千差万別です。
たとえば、仕事に慣れている方が1時間のテープ起こしにかかる時間は5時間程度という目安があります。
初心者の方では15時間かかるかもしれません。
仮に、1時間の音声が1万円だったとすれば、5時間で仕上げれば時給2,000円ですが、10時間で仕上げれば時給1,000円、15時間で仕上げれば時給約600円です。
実際には、SOHOサイトでの報酬はもっと安価である場合も多いです。最初は、勉強するつもりで、研鑽を積み、ベテランになったら直請けで値段交渉もできるぐらいのスキルを身につけるのを目標にしてみましょう。
必要な資格はある?
テープ起こしに資格は必要ありません。
しかし、企業側が文字起こしライターのレベルを知るための目安にしたり文字起こしライター側が自分の実力レベルを説明するための目安となる資格があります。
主に次の2つです。
- 文字起こし技能テスト
- テープ起こし技術者 資格検定試験
資格の勉強をすることで、テープ起こしに必要な知識やスキル、幅広い教養を身につけられます。自分の実力を明確にするために、資格取得を考えてみてもよいでしょう。
テープ起こしは時間がかかる?
テープ起こしにかかる時間を教えてください。
テープ起こしにかかる時間は、音声の時間の5倍という考え方があります。[注2]
音声の5倍というのは、慣れた人が、音声の状態がよく、平易な内容の案件を文字に起こした場合にかかる時間です。もし聞き取りが難しい音源であったり、内容が専門的で用語調べなどに時間がかかったりすると、ベテランの人でも音声の長さの10倍かかることもあります。
初心者の方であれば、もっと時間がかかると考えられます。音声の長さの15倍かかっても不思議ではありません。「それはちょっと…」と尻込みしてしまうかもしれません。しかし、ずっと、15倍もかかるわけではありません。正しい表記などの知識が身につき、仕事に慣れてくれば、起こしに必要な時間も短くなっていくでしょう。
スキルアップの過程を楽しもう
仕事として文章を扱った経験がまったくない人では、最初は音声の15倍の時間がかかるかもしれません。
「テープ起こしの仕事は割に合わなそうだな…」
そんなふうに感じられる人も多いかとは思います。しかし、適正のある人であれば、仕事をとおして知識を得られるメリットは何にも代えがたい喜びでしょう。初心者から経験を積んで作業時間を縮めることはできます。
一つひとつ学びながらスキルアップしていきましょう。
[注2]参考文献:廿里見「文字起こし&テープ起こし即戦力ドリル」
どうやって勉強すればいい?
それでは、どうやってテープ起こしの勉強をすればよいのでしょう。
2つ方法があります。
- 講座で学ぶ
- テキストで独学
主な方法は講座かテキスト
有名な通信講座にも、テープ起こし(文字起こし)のコースが設けられています。また、市販のテキストを利用するのもよいでしょう。音源をダウンロードして、聞き取りの練習ができるテキストもあります。
上手に活用してみましょう。表記については、共同通信社の「記者ハンドブック」を手元に置くのがおすすめです。
普段の生活でも言葉の知識を身につける
このほか、普段の生活でも、知っている言葉を増やすように心がけてみましょう。ニュースを見たり、新聞を読んだりすることは、時事問題に詳しくなり、専門用語を覚えることにつながります。
全く知らない言葉を音声で聞き取ることは非常に難しいですが、少しでも知っている言葉であればスムーズに聞き取れるでしょう。
関連する仕事でさらに知識量を増やす
文字起こしと関連する知識を使う仕事があります。
- ライター
- 校正者
- 翻訳
どれも、言葉に関連する仕事であるため、正しい言葉遣いや表記ルールの知識が必要です。
テープ起こしだけでやっていくのもよいですが、文章力を磨くために、兼業するという選択肢もあります。
言葉が好きで知的探究心があるなら始めてみよう
在宅で楽して儲けたい…テープ起こしは、そのような発想で始めるのには向いていません。仕事に慣れるまでは時間もかかるため、割に合わないこともあるでしょう。
しかし、言葉が好きで探究心のある人であれば、知的好奇心を満足させられるとても面白い仕事だと感じるはずです。さまざまな事柄に興味があり、言葉の探求が好きな方は、仕事そのものを楽しみながら研鑽を積んでいくとよいでしょう。
誠実に仕事を積み重ねるうちに、いつしか、ベテランになって、難しい仕事を任されているかもしれません。